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「牧野万葉植物図鑑」
定価: ¥ 14300
#本
概要
牧野が晩年に取り組もうと思い、果たせなかった幻の仕事に『万葉植物図譜』がある。本書は、牧野の膨大な遺品の中から発見された『万葉植物図譜』の各種資料と植物画、既刊の刊本にあるエッセイ等から、牧野の「構想」を忠実に再現した、もう一つの「牧野図鑑」である。
【牧野富太郎と万葉集】
日本最古の歌集である「万葉集」には、植物を詠んだ歌が全体の3分の1を占め、その種類は160にも及ぶ。『牧野日本植物図鑑』に記載される通り、牧野は「和名の起源」に強い関心を寄せていた。牧野にとって「万葉集」の歌は、和名研究の貴重な題材だった。草木を愛し、草木と共に生きた、牧野と万葉歌人たちの「思い」には、時代を超えて相通じるものがあり、深い共感が存在したのである。本書には、牧野が「万葉植物図」と朱書きした紙片と共に発見された110枚余りの貴重な植物図を万葉歌とともに収録する。
【牧野富太郎原稿】
本書ハ従来曽(かつ)テ見ザリシ完全正確ナ図譜ヲ形成スルモノデアル、乃(すなわ)チ其(その)適正ナ解説ト相俟(あいまつ)テ万葉研究者並(ならび)ニ一般ノ歌壇ハ勿論(もちろん)、延(ひ)イテハ文学界科学界ニ対シテモ必要欠クべカラザル文献ト成ルコト疑ヒナシト信ズル(「牧野富太郎原稿・高知県佐川町教育委員会蔵」より)
「分類学は本草学から発展したとされる。本草学は生き物のみならず鉱物までを対象としており、その有用性の観点から、区別し、名前を付け、特徴を記述する学問で、江戸時代までの日本の分類は中国の本草学を手本としてきたが、幕末からは西洋の近代的な生物学としての分類学を導入して発展させてた。牧野富太郎博士はちょうどその日本における分類学の発展と歩調を合わせるように研究の歩みを進めた分類学者と位置付けられよう(中略)。万葉の時代にはもちろん分類学も本草学もなかったけれど、万葉集には多くの植物が名前で詠み込まれている。その歌の多くが恋の歌であるのだから、歌を詠むことが文化であり、恋することもまた文化であったのだろう。そこに興味を深めるなら、その中で植物がどのように捉えられているかを知ることも必須であると考えられる。
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